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おぎゃあ。んぎゃあ。

分娩室に響く泣き声。
ドクドクとうるさかった心臓が、次第にゆったりとしたいつもの速さに落ち着いていく。

「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」

助産師さんの声に、私は一気に夢から現実に引っ張られたような感覚を感じた。

産まれた。

何ヶ月もお腹を痛めて、心も、体も無茶苦茶になってしまった原因である我が子が。
大好きだった唐揚げも食べれなくなって、必要以上に音に敏感になってしまって、今までの生活が送れなくなってしまった原因である我が子が。

なんて子だ。

産まれる前から母親を苦しめやがって。挙句の果てには産まれる瞬間すら苦しめやがって。なんなら今だって体中が悲鳴をあげてるんだぞ。

「本当におめでとうございます。お母さん」

そっと、まだ目も開けられていない、ふやふやの我が子を渡される。
私は震える手で我が子を抱きしめた。

本当、なんて子だ。

どうしてこんなに涙が出てくるんだ。
どうしてこんなに嬉しいんだ。

どうしてこんなにも愛おしいんだ。

とく、とく、と規則正しく動いている胸の鼓動に、あぁ、この子も生きているんだと、ようやっと産まれてきたんだと思った。

どうせ、これからも私を困らせるんだろう?
きっと我が子が憎いと思う日が来るかもしれない。子育てって多分そうゆうものだ。
誰にだって限界がある。

でも、この日のこの感動と、我が子を想う愛おしさを超える日は、多分この先、一生来ないのだろう。

産まれてきてくれて、ありがとう。



『胸の鼓動』

9/8/2024, 11:25:36 AM