John Doe(短編小説)

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レコードの針とあなたと


私はレコードをかける。
華やかな音楽が流れ、憂鬱な夜がロマンチックなものに変わる。
いつの間にか、あなたが部屋にいた。
私の手を取り、ダンスへと誘導する。
私は踊れない。
それでも構わないと、あなたは私をリードする。
あなたはとても暖かい。
あなたの温もりを感じていると、つい足を踏んでしまった。
気にしないでくれ、とあなたは微笑む。
レコードの針のノイズ音がとても切ない。
曲が終わってしまうことが悲しい。
でも、いつまでも踊り続けることはできない。
曲が終わりに差し掛かる頃、私は踊るのをやめて、あなたの腕の中へと身体を預けた。
あなたは微笑んだ。
私は何度も何度もあなたの名前を呼んだ。
素敵な夜だった。

















レコードは、もう鳴らない。
針は折れてしまっている。
道路の真ん中で私は横たわっていた。
頭から血だまりができている。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
あなたが誘導してくれるのを、待っていた。

3/17/2023, 9:19:49 AM