影山零

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私にはお姉ちゃんがいる。私の両親とは仲良くはないけれど、私には仲良くしてくれる。

私が生まれたのは、お姉ちゃんが小学校二年生のときだった。勿論生まれてきた頃の記憶なんてあるものじゃないから、お姉ちゃんがどんな顔をして私を迎えたかなんてわからない。両親は私の誕生に喜んでくれていたけど……

今年から小学校に通い始めた。毎日日記を書かされているから、何か思い出を作らなくちゃいけない、とお姉ちゃんに言うけれど、そんなことしないで適当に書けばいい、とお姉ちゃんは私に言う。

そんな日常を過ごしているとある日、お父さんが無職になった──つまり、会社が潰れちゃってお父さんの働く場所がなくなってしまった──らしい。お父さんが仕事を見つけるまで、貯金から崩したり、政府からお金をもらったりでなんとか過ごしてた。

お母さんが突然私にこんな事を言った。
「ごめんね、〇〇ちゃん。お姉ちゃん、もうしかしたらまた施設に返さないといけなくなってしまうかもしれないの。

情けない話だけど、飼い始めた"ペット"を飼い続けるお金がなくなってしまったのよ。いい?」
「だめ!! わたしのペット!! あんなペットでも世界に一匹だけのペット大切なペットなんだから! 返しちゃだめ!!」
「でも私とお父さんはあの子に対してなんの愛情もないのよ? このまま育て続けても……ねぇ…?」
「いやったら嫌!」

その日、お姉ちゃんは死んだ。

"親"を殺して。

ママ?お姉ちゃん死んじゃったよ。

そうねぇ。困ったわぁ。お父さんも仕事が見つかったし、新しいペットでも飼いましょうか!次は弟かな?

  *
なんで私を置いていったの?養護施設に預けたの?ママ?ねぇママ?私も死ぬから。

あなたも死ぬ前に答えてよ!私の想像通り応えてよ!


テーマ-【世界に一つだけ】

9/9/2024, 11:58:18 AM