猫宮さと

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《星空》
太陽が地の下へと姿を隠し、引き換えに明星が輝き、空は葵を経て青藍に変わる。
明星の光を合図に青藍にぽつりぽつりと光が灯る。
夜半にもなれば、天は天鵞絨に砕いた金剛石を散りばめたかのような輝きに満たされる。
細かな輝きは身を寄せ合い、乳白色の河となり天頂を穏やかに流れていく。

金銀の煌きを放つ赤紫の瞳の少女は、天へとその両手を伸ばす。
己が瞳の輝きと同じものを掬い取るかのように。
少女の白銀の髪が、天頂の河のように風に流れ揺らめく。
木々は囁き応えるように、緑の葉をさやさやと鳴らした。

その望みは何れに向かうか。
その願いは何処にあるか。

星々も瞬き語りかける。
泣いても良い。己が想いを捨てるなかれ。
今はその小さな想いを育む時。
彼の人の孤独。
彼の者の悔恨。
彼の方々の慈愛。
その想いが強ければ、何れ全てに手が届く。
想いは紅き弧を描き螺旋となり、全てを繋ぐ。

その時少女の指先で、星が一粒大きく煌めいた。

7/5/2024, 12:32:12 PM