ソノレソレ

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『PM17AM30』

「瀬良先輩ーー!!!」
夕暮れが迫り影に飲み込まれそうな校舎内で明るく活発な声が響く、太陽みたい輝く笑顔はその人柄を思わせる。
彼の名前は賀美能 暁人、この『樹天学園高校』のアイドルてき存在だ。
「ちょっと!少し声を落としなさいよ。誰かいたらどうするの。」
「えへへ、ごめんなさい。瀬良先輩がいたから嬉しくて声が大きくなっちゃいました。」
そう言い彼はどこか恥ずかしそうに視線を逸らしながら右側の耳たぶをつまんだ。
「あなたも暇じゃないんだから私に構う必要はないわよ」
「俺にとって瀬良先輩と過ごせる時間は有意義な時間ですよ‥‥‥瀬良先輩?」
先ほどまでの彼の態度と一変し真剣な眼差しで瀬良を見つめた彼を尻目に彼女は遠くを見つめていた。
「‥‥ユウ」
寂しげな彼女の視線の先には複数の人間に囲まれ頬を紅くし笑うこの学園では有名な生徒の姿があった。
「瀬良先輩」
「あ、ごめんなさい。少し考え事をしていて聞いていなかったわ」
「‥瀬良先輩は、」
「‥?どうかしたの?暁人」
「へへ、やっぱなんでもないです。」
そう言い彼は視線を逸らしながら遠くを見た。
「‥不満があるとき視線をまったく合わせようとしないところ変わってないわよ、暁人。」
「あは、やっぱりバレたか。」
視線を戻し右手で自分の左手首を掴みながら戯けたように笑う彼はどこか狂気的で美しい危うい雰囲気をまとはわせて彼女の瞳を見つめた。
「暁人、あなた最近白々しいわよ。何か言いたい事があるならはっきりといいなさい。あなたも私もあの頃みたいな無知な子供じゃないのだから」
「白々しい?どこら辺が?瀬良先輩にはどんな風に俺が見えるの?」
「‥あなたは私の大事な従兄弟よ、それ以上でもそれ以下でもないわ。」
彼は視線を落とし口元をゆがめ笑いながら一言、
「‥はは、知ってたよ。音御姉」
「あ、ちょっと暁人!」
そう言いながら静かに背を向けて彼女から去って行った。
 
 人に溢れ賑やかだった朝と比べ物静かになった夕暮れが差し込む寂しげな廊下で絹のように細かく色白い美しい肌を持った女がぽっんと影が落ちた廊下の先を見つめていた‥‥

7/12/2024, 1:38:54 AM