つぶて

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風に乗って

春風は時に悩みの種を運んでくるらしい。
柔らかな陽気と土の香りを吸い込むと、鼻先に微かな棘を覚えた。今朝も花粉やら黄砂やらが飛び交っているらしい。外の世界に嫌われている私は仕方なくマスクを戻す。どこからか、同い年のアイドルの歌が聞こえる。
雨露の如し、と書いてジョウロと読むことを知ったのはいつだろう。雲の上の神様になった気分で、花壇に恵みの雨を降らせていた頃の私は、確かにこの庭の一部だった。胸いっぱいに息を吸っていた私。あの頃好きだった花は、もう思い出せない。
如雨露を手に、花壇を見つめていた。遠慮がちに咲いた花が、申し訳なさそうに私を見ていた。今年も生育が悪いのはどうしてだろう。肥えた土、日当たり、適度な水。こんなにも手をかけているのに良くならない。
庭の隅、コンクリートの割れ目に咲いた花が目に留まった。窮屈そうな場所に根を張ったその花は、誰に育てられるわけでもなく、ただ太陽に向かって咲いていた。
何が違うのだろうか。風に乗って生まれ落ちる場所は選べないというのに。それぞれの根の深さを思い、根性という言葉を思い、それから悔しさが込み上げた。
私は、どうすればいいのだろう。
平和な国に生まれ、衣食住に困らず、不自由のない環境で育った私は、今日も花開けずにいる。
そよ風が頬を撫でた。
私は大きなくしゃみをして、家の中へ駆け込んだ。

4/29/2024, 6:03:15 PM