あの日君の奏でる音楽は無音だった。
ピアノにはちゃんと触れているのに、僕の耳には届かなかった。弾き終わったあと僕の前に来てあの子は笑った。「どうだった?」と。僕は嘘をここで吐く訳にはいかないと思い、正直に「聴こえなかった」と答えた。するとその子は寂しそうに微笑んで言った。「やっぱ死者には現世の音すらも届かないんだ」と。そう言われ僕は思い出した、今から1週間前にこの3階の音楽室から飛び降り、死んでしまったことを。そう思っているとあの子は音楽室のドアの前にたっていて最後に僕はこう言った「君のピアノの音はとても綺麗だった。」その子は小さく微笑んだ。
8/12/2024, 10:07:05 AM