Werewolf

Open App

【海の底】
 差し込む光は、いつでも頼りなく、誰かが上を通ると、突然暗くなってしまうような、そんな場所だった。温い流れがあって、私はいつでも、そこでゆらゆら、じっとしている。時折腹が減ったら、暗くなる時に、腕を素早く伸ばせば良かった。そうすると、五回に一回くらい、小さなものが手に入って、私が口へ運べば、腹がくちくなった。
 ぼんやりとそこにいる。時々誰か、ここをよこせとばかりに、ぶつかってくる。私はそれは、我慢ならない。腕の先をぎゅっと丸めて、それを殴るのだ。大抵のやつは、私の一撃に驚き、逃げ帰ってしまう。けれど、本当に稀に、何度も何度も、ぶつかってくるやつがいて、そうなると私は、参ってしまって、一度その場を離れるのだ。足元で、得意そうに、そこに入り込んだやつめに、私はありったけ、黒い靄を噴き付けてやる。すると、やられたやつは慌てふためき、大暴れして、そこから出ていく。私はまた、悠々と、その場所に座り直す。
 私の居場所を、取り戻して、ほっとする。
 光のゆらゆらの向こうから、見えるもの、ずっと遠い、白いもの。あれは時々、赤くなったり、黄色くなったり、消えてしまったりする。けれど、私をずっと見ている。お互い、喋らないけれど、お友達のようなものだ。
 見ていたかい、友達。私は今日も無事に、ここで過ごせるようだよ。そう思って見上げていると、ゆらゆらの向こう、白かった友達が、少しずつ黄色くなって、橙になって、赤くなって、やがて紺色に変わってしまった頃、光と一緒にいなくなってしまった。
 眠って起きたら、顔を出すのは、知っていたから、私は不安でなかった。座り込んで、腕を動かして、いい場所に座れるようにする。ゆっくりと、意識を緩めて、眠ることにした。

1/21/2024, 12:53:15 AM