NoName

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 色の無い世界で生きて来た。
 全てが褪せて、古ぼけた写真のような、頭上を覆う曇天のような、目前にあるのに現実味が無くて、視界に薄靄が掛かっているような。
 全てが他人事のような世界で、ただただ漠然と生きて来た。

 そんな世界に、強烈で、鮮烈で、眩いくらいの極彩色が飛び込んできた瞬間。
 見たことも無かった光景に、それを与えてくれた君に、初めて心を動かされた。

 自分が、産まれたような気がしたんだ。

6/21/2023, 10:33:44 AM