君と見上げる月
一緒に遊んだ日は自然と食事に行く流れになる。
もちろん複数人で行く事にはなるけれど、同じ場所同じ時間を共に過ごす事に意味があると自分に言い聞かせている。
何が好きだとか、まだ酒に弱いだとかさりげなくチェックを入れて。
(好みの変化は若干あるけど、相変わらずお子ちゃま舌な感じだなぁ)
好き嫌いはほとんどないのを知っている。
お互い独身、自炊をするタイプじゃなくて外食や宅配が増えるのも自然な流れで。
「野菜食べないの」
「最近は食べる」
「じゃあこれ食べなよ。これも、あと」
「もういい、もういい」
年上だからか世話を焼いてくれるのもいつもの事。
この感覚は何年経ってもむず痒いような、安心するような妙な感覚。
食欲も満たされて、ほどほどに切り上げた食事会も終わる頃。
会計が終わって店を出た視線は自ずと空に向けられた。
「あー、明日も暑いだろうなぁ」
「だろうねぇ」
「散歩も難しいねぇ」
「歩くけどね」
「死ぬよ」
綺麗なまん丸の月を見上げて鉄板の言葉が浮かんだけれど、あまりにベタ過ぎて何とか飲み込んだ。
(やだやだ。歳食う度に親父ギャグに磨きがかかるわぁ。ギャグにもならん)
「月が」
隣から聞こえる声に息も止まる。
「綺麗ですね?」
「疑問系?」
冗談だって分かっていても胸が高鳴るなんて末期にも程がある。当然人の気も知らないで彼は見上げたまま鼻で笑う。
(鼻詰まってる癖に。ちょっとマジで照れしてんじゃねぇよ)
ああ、もう、可愛いな。言わないけど。
9/14/2025, 1:45:49 PM