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 「十で神童十五で才子二十越えればただの人」

 今日私は18歳を迎えた。ことわざの通りに、10歳の頃には「神童」と、15の頃には「才子」と褒められたものだ。

 最初こそ大人たちにこぞって褒められ嬉しかったものの、時が経つにつれてその言葉は重荷に変わっていった。同世代からの賞賛や感嘆の素直な声も、いつの間にか羨望や嫉妬など色んな感情がごちゃ混ぜになった声へと変わった。

 「ただの人」まであと2年。私は早く「ただの人」になりたい。自分の才能が、徐々に凡人の枠に沈んでいく自覚があった。だからこそ周囲から向けられる期待が、感情が、とてつもなく重たく苦しかった。

 けれどもいざ自分の才能を前にした時、普段感じる重さが、苦しさが、消え失せてしまうのだ。その度に、あぁ、私はこの才能がどうしようもなく大好きなのだ。この気持ちさえあればもしかしたら、そう思ってしまう。

 でもやっぱり、私が「ただの人」になることはこちらが望もうと望むまいと避けられないのだろう。ならば「ただの人」になるその時までは、淡い夢を見ていたい。


『夢を見てたい』

1/13/2023, 10:36:58 AM