変わらないものはない
栴檀草を避けて、田畑を縫って進む。
これが帰郷なんだって。
大人になったように装う私を
幼少の自我は簡単に見破るだろうか。
一緒に逃げ込もうよ、世界の規模を知らなかった
不特定多数の評価も無かったあの場所へ。
それは古びた商業施設の一角、衣類フロアの片隅にあった。
遊具とブラウン管、プラスチックの柵
小さな汽車はワンコインで冒険ができた
がたがたと揺れながら移り変わる景色は鮮やかで
作り物の汽笛さえ、「今」の謳歌には十分だった。
画質の落ちた記憶は、そんな些細な遊び場の
わずかな埃臭さと一緒に散らばっている
失われていくのだ
生まれながら、改められながら。
肥大化した社会は無数の無関心となって
半端な人道で正義を履き違えた他人が
誰かの人生に許可なく登場しては捌けていく
何となく気に入らなければ、去り際に刺すことだって厭わない。
空虚な数字に首を絞められて
躾に慣れた者は世代に潰されていく
何を取り入れて、何から距離を取って
どんな言葉を胸に仕舞うのか
どんな言葉に個々の尊厳が攫われてしまうのか
入れ子の核は知っている。
有無を言わさず時間は流れていくから
無数に始まる世の入れ替わりを新陳代謝と言うなら
見失ったまま飲まれていく様を、もう直視できなくなって飛び降りる前に
手遅れで、間に合わなくなる前に。
戻れないあの頃に見習って
戻らせない恩恵に甘えて
馬鹿にされるくらい今を見よう。
自分にしか愛せない変遷と手を繋いでいよう。
12/26/2024, 1:40:22 PM