今日は君が出張から帰ってきて初めてのデート。
2ヶ月ぶりに顔を合わせる。
頻繁に出張に行く君だけど、2ヶ月空くのはかなり珍しい。
私もどちらかというと仕事人間だし自分の時間を大切にしたいほうなので、全然苦ではないんだけど、久しぶりに会うとなるとやはり浮き足立つ。
少し春の訪れを感じるような気温だし、そろそろ春物をおろしてもいいかなと思いながらクローゼットを物色する。
どんなに真剣に悩んでも決して褒めてはくれないから、私は私の着たいものを着る。
どうせなら可愛いって思われたい気持ちはあるけど、メイクもナチュラルに。最近では、女友達と遊ぶ時のほうが、メイクに気合いが入る。
そんな私が今日選んだのは、ジージャンに薄紫のニットトップス。ボトムスもジーンズ素材のペンシルスカート。カジュアルにグレーのニット帽も合わせているけど、トップスの袖や首周りにはレースがあしらわれているので、甘さもある。
スニーカーは、彼とお揃いで買ったもの。
彼はお揃いなんて恥ずかしいからと嫌がったけど、私の誕生日だからと無理矢理押し切った。
乙女心は付き合ってすぐに置いてきたけど、やっぱりお揃いのものを一つくらいは欲しかった。
彼のことだから、今日のように私と会うタイミングでは履かないんだろうけど。
「あっいたいた、お待たせ〜…って、えぇ…。」
駅で待ち合わせた私たちはお互いに目を見開いた。
彼の今日のコーディネートは、ジージャンにジーパン、濃いめではあるけど紫のニットトップス。黒のニット帽。そして、お揃いのスニーカー。
そう、示し合わせたかのように、まさかのペアルック。
「こんなことあるのかよ…。さては、お前俺の部屋にカメラでも仕掛けて…」
「んなわけないじゃん!めちゃくちゃ奇跡。」
「こんなん恥ずすぎる、どっかでテキトーに服買って着替えて来るわ。」
彼がそんなことを宣った瞬間、私は思いっきり腕を組んだ。久しく手も繋いでなかったから、なかなか勇気が必要だったけど、勢いに任せた。
「なんだよ?」
「たまにはいいじゃん!こういうのも。絶対着替えちゃダメだよ。」
「えぇ〜…」
少し…いやかなり恥ずかしそうではあるけど、まんざらでもない表情。
久しぶりのデートなんだし、たまにはいいよね。
ザ・カップルって感じで堂々と歩いてみよう。
10.たまには
3/5/2023, 1:05:50 PM