月凪あゆむ

Open App

別れ際に

 私の幼なじみは、とっても鈍い。
 だってこれまで、いくつもの「ラブレター」という名の「差し入れ」をもらっていることか。


 ほら、今日もバスケの練習中に、女の子からの差し入れが。

「ありがとう! これからも応援よろしく!」

 いや、「応援」というよりも「好きです」って感じの眼だから、あれは。
 ……言いたいけど、言いたくない。           だって
「俺もあの子、気になってたんだ」
なんて言われた日には、へこむのはこっちだ。


 私の幼なじみは、ちょっと寂しがりだ。
「一緒に帰ろ」
 部活終わりに一緒に道を歩くのは、もうお決まりのようなこと。
 その日の私は、いつもとちょっと違った。
「ねえ、差し入れに込められてるメッセージって、なんだと思う?」
「ん? そりゃ「頑張って」だろ?」
「……それだけ?」
「ん?」
 本当に、鈍い。
「私、思うんだけど。差し入れって、ラブレターに似てない?」
「ラブレター? なんで?」
「なんで、って……」

 あぁ、ダメだ。これじゃあ伝わらない。
そうこう言ってる間に、別れ道になる。
「……やっぱ、なんでもない。忘れて」

「――おまえ今、「こいつ鈍いな」って思っただろ」
「え?」
 彼は、なんだかとても真剣な顔つきをしていた。
「確かに俺は鈍いとこあるけどさ。おまえも、それなりに鈍いと思うよ」
「? なんの話?」

「――俺は、おまえが好きだから、一緒に帰ろうっていつも誘ってるんだけど」

「――――え」
 じゃあな、と。
 そんな、爆弾発言を別れ際に残していった。
「…………」

 私の幼なじみは、とっても鈍い。けど。
 私も、もしかしたら鈍いところがある、のかもしれないと。
 はじめて、そんなことを思った。

9/28/2024, 11:19:15 PM