『今日の心模様』
「今日の心模様って難しいよね、自分じゃ見えないし」
「それに小石を投げられた泉みたいに色んな波紋があって、いつも同じじゃないしね」
いつかの放課後、直前の授業の内容で大真面目な会話をして、その後くすくす笑い合った。
あの頃は本当に毎日毎分毎秒、心模様は変わり続けていたと思う。
2人とも会話が色んな所に飛んで、笑ったり悲しんだり愛したり苦しんだり安心したり、してた。
「ねぇ、今日の心模様はどうかしら?」
「穏やかな海のように少しだけ、波があるわ」
あの子は相変わらず詩人ね。くすくすと笑ってしまった。
「懐かしいわね、昔もそんな話をした気がするわ」
「えぇ、丁度その事を思い出してたの」
くすくす、2人見合って笑う。
何年経ってもあの子といると、出会った学生時代に戻ったかのよう。
「私、とても幸せよ」
「それはとても良かったわ」
こんなかけがえのない友人に出会えたこと、神さまに感謝したいくらい。
もちろん、それ以外の家族や友人に出会えたこともね。
「だからそろそろ、収穫してもらって構わないのよ」
「もう、いいのね?」
返事の代わりにこくりと頷く。
あの子はそっと、その身に似合わない大きな鎌で私の魂を刈った。
「あぁ、綺麗ね」
あの娘の魂は出会った時から綺麗だった。
でも、彼女が言ったの。
これからもっと色んな経験をしてもっと綺麗な魂になるから、それまで刈るのは待ってほしいって。
「60年待っただけのことはあるわね」
さまざな感情が混ざり合って、何色とも言えない綺麗な色になっている。
昔よりもずっと混じり合いや色味も増えて、魂は綺麗に輝いていた。
4/23/2024, 1:16:59 PM