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学生時代はいつも金がなくて、ボロいアパートの天井をみつめてはそこにシミを作り出そうとしていた。天井のシミ数えてたって言えばロマンチックな気がしてこないか?
「てんでダメだね」
彼はこちらをチラリとも見ずにそう言い放った。こういう反応は想定できたから、僕はまためげずに話し続けた。僕の生涯二十余年、足りない経験から人生を語ってみたが、彼は安いコーヒーに夢中であった。そして時折、
「いいや、そんなことはあり得ない」
と退屈そうに言うのである。
そして太陽が傾いて空を燃やしだす頃合いになると、彼は鮮やかな色彩の派手な花を一輪だけ僕の墓石に供えてから捨て台詞とともに立ち去るのだ。
「また明日」

2/25/2025, 9:28:30 AM