ンーバップ

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桜臭い、桜臭い。世の中のありとあらゆるものが桜のイメージに埋め尽くされている。右を向けば桜味のフラペチーノ、左を向けばピンク色の暖簾、服、人、人……。そういう抽出されたイメージだけの、想像の「桜」たちをかき分けて道を歩くと、やっと家に着く。
家の前の道路には格好のつかない桜が咲いている。立派でもなく、ひょろひょろとして覚束ない。僕はそいつに近寄る。匂いはしない。たいしてピンクではない。むしろ白い。
この不格好な木の下だけが無臭で、清潔で春らしい。

4/10/2024, 3:54:17 PM