またいつか
「着いたぞ、あんたの故郷だ」
「長いようで短い旅だったような気がするよ」
学者の月並みな言葉に盗賊は肩をすくめた。
「キミはまたあてのない旅を?」
「まぁな。顔見知りがいるんじゃ仕事もしづらいんでね」
「次はどこへ向かうのか、決めているのかい?」
盗賊はひらひらと手を振った。
「さてな。当ててみせろよ」
「ふむ、我々は北から南下してきた。そのまま更に海沿いを進むか……または来た道を戻るのか。北東へ向かうということもあるか」
「選択肢を並べただけじゃないか」
「そう、だね」
学者は言葉に詰まってしまった。何か言わなければ。そうでなければ「またいつか」そんな朧げな別れの言葉を紡ぐしかないのだから。
7/22/2025, 3:22:35 PM