ここはきわめて治安が良くない。現に僕は本日3回目のカツアゲに遭っている。
「ジャンプしてみなって、おチビちゃんよお!」
怖いけどヘタに動いたらもっとひどい目をみるだろう。僕はもう鳴りもしないポケットを思いながらぎゅっと目をつむった。そのとき、
「おい、つまんねーことしてんじゃねえ」
ゴンッバキッ
「ひえ……」
それはあっという間だった。目を開けるとつい先ほどまで僕を嗤っていた男は情けなくも気絶していた。そして、そこに立っていたのは学ランを着た屈強そうな男の子であった。
「お前、大丈夫か」
振り返った彼はそう言った……と思う。実際のところ僕はお礼も言わずに逃げ出していた。彼があまりに背高でガッチリしていたものだから。
あの子が獅子なら僕は子猫であった。
そして弱きものは往々にして、爪をとぐことだって許されたりはしないものだ。
11/16/2024, 9:23:00 AM