「あーもーやだぁーー!!もう何回目の失恋!?男って皆こうなの!?私の男運が低過ぎるのは何かの呪いなの?!」
そう言ってヤケ酒を煽る友人の介抱をするのは今に始まった話ではない。
本日何度目か分からないため息を彼女にバレないようにそっと零す。
「程々にしときなよ?明日二日酔いで絶対後悔することになるから。」
「うぅ、……どうして…私は好きだったのに……」
……だめだこりゃ、もう手遅れかも。
どうやら今回も付き合った男が最低のクズ野郎だったらしい。二股をかけられており、彼女は所謂キープされてる状態だったとか。
私の友人は可愛い。可愛くて優しい。おまけに頭も良くて面倒見も良い。つまりモテるのだ。
なのに何故かそういう類の男に引っかかって付き合っては別れを繰り返し、結果ヤケ酒を煽る事になるくせに、またしばらく経つと新しい出会いを求めているものだから、見ているこちらとしてはかなり心配である。
おまけにすぐに人を信じてしまう性格ときた。
最早ピュアなのかピュアじゃないのか分からない。
「はいはい、水取ってくるから大人しくしててね。」
「…やだぁ……そうやって皆離れていくんだぁ……」
「分かったからそろそろ飲むのやめなさい。」
イジけ始めた酔っ払いから酒を取り上げ水を取りに行こうと立ち上がる。その時、
「…………ごめんね、嫌いになった……?」
机に突っ伏した彼女の小さく呟いた言葉が耳に届いた。
「!〜っ……あのさぁ、嫌いだったら毎回こんな時間まで付き合ったりしないし、そもそも…」
そこまで言いかけてふと彼女を見ると、既にむにゃむにゃとよく分からない寝言を言いながら眠りの世界へと旅立っていた。
今度こそ盛大なため息をつく。
「…………私の気持ちも知らないで。」
すやすやと寝ている彼女の前髪を掬って、おでこにそっとキスを落とす。
誰かさんのおかげでこっちはもうずっと失恋中だってのに。
“他の奴なんかやめて、私にしときなって。”
寸でのところで飲み込んだ言葉が胸の中でぐるぐると渦巻く。
「………早く、幸せになってね。」
そして願わくば、叶わないと知っていながらいつまでも淡い期待を持ち続ける長い長い私の失恋を終わらせて欲しい。
#失恋
6/4/2024, 4:32:44 AM