六月の帰路

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手に植えた黒い文字
それは段々と
涙で霞んでいく
終わりの見えない人生みたいに
きえていってしまう思い出みたいに
やがてその黒い文字はみえなくなっただけで
私の黒い心はなにも霞まずにそこにいる
窓の夜空は、私の心に吸い込まれ、真っ黒に塗られたキャンバスが飾られていた。

悲しそうな傷がついた所に
涙を零しても痛いだけで、何も消えてくれなくて
忘れさせてくれない思い出だけが残る
涙なんて流しても
何も意味が無いのに
何をしているの?そう聞いても、
また涙で濡れるだけで
私は何がしたいの、と聞いても
答えてくれないのは分かっていた
あの頃の空を、あの頃の夕暮れは
明日を願うばかりで何も背景がない
空白の中の空
ただ夜に暮れてただ涙に濡れる
手元の月は濡れていて
手垢だらけの月は僕を勇気づけ
僕の目に光をくれる
でもその光はすぐに消えて
私は光ってなんていなかったんだなって
真っ白な単語帳思い浮かべて
そこに色違いの4文字を書いて、ひとつをちぎって捨てている
いっそのこと
あの夜空に吸い込まれて、誰かの黒い文字になりたいなんて口ずさんでいた。


9/8/2022, 10:31:31 AM