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私の名前は有名な俳優から取ったものらしい。
映像がまだモノクロだった時代に活躍した人で、私はその俳優が出演している作品を一度も見たことがない。

まだキラキラネームも流行っていない世代だったが、子どもの頃から少し変わった名前という自覚はあった。
俳優以外にも歴史上に存在し、覚えやすく呼びやすい名前で同級生にも親しんでもらえたと思っている。

言わずもがな、俳優とは全く関係の無い人生を送っている。
その道に憧れたこともなければ、俳優を目指すように教育されたわけでもない。
働きに出れば苗字で呼ばれ、そもそも名前を知られる機会も殆どなく、知られたところで何か会話が弾むわけでもない。

名前しか個性のない私は鳴かず飛ばずで、社会人になってから同級生の活躍をまた聞きするようになり、私は初めて“名前負け”を意識するようになった。
“秀”の字を「優秀の秀」と例えることに抵抗感を覚えるようにもなった。

もはや名前以上の意義を持たなくなって、私はずっと手持ち無沙汰を感じながら生きていくのだろう。
名前を言うことがあっても、何も気にしていないフリをして愛想よく振る舞うのだろう。

俳優から取った名前というのは、皮肉にも言い得て妙に思えた。


~私の名前~

7/21/2024, 9:37:00 AM