かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社に住まう子狐は、
ひょんなことから別世界の組織、「世界線管理局」の法務部の、偉い人から手伝ってほしいと、
美味しいジャーキー3種類につられて、車にポンと、同乗しました。

なんでも人探しだそうです。
別世界から来た密航者が、悪いことを企んでいるそうで、その「密航者」を探すのだそうです。

「じゃーきー。じゃーきー」
コンコン子狐は報酬を貰う前からご機嫌。
牛ジャーキー、豚ジャーキー、鶏ジャーキー。
おお、おお。理想のあなた。
あとはフレッシュな油揚げもあればカンペキ。
ああ、理想のあなたがたよ。幸福の美味たちよ。

「午前8時58分に、最初の匿名通報です」
カタンカタン、かたんかたん。
ギアチェンジの軽快な音が連続します。
ツバメでもなくルリビタキでもなく、でも子狐の知っている管理局員が運転する車で、ツバメとルリビタキと子狐は、現場に急行します。
「密航仲間だそうです。『一緒に密航してきた仲間が、東京で別世界由来の道具を使い、現地人への違法行為を計画している』。
初動調査開始前に2度目の匿名通報が、別の密航仲間から為されました。同9時55分です」

「その違法行為を計画してるやつは?」
情報を確認しておったルリビタキは疑問顔。
「通報があったんだろう?特定できてないのか?」

特定できてたら子狐のチカラは借りませんよ。
ツバメは首を小さく横に振るばかり。
「何故」
「通報行為がバレました」

で、情報提供された「違法行為」の場所に、こうして急行してるワケだよん。
ハンドルを軽く左に傾けながら、運転手がルリビタキに言いました。

子狐は通報も、状況も経緯も気にしません。
ただジャーキーが頭にいっぱい、ぽわぽわ溢れておるだけです。
牛ジャーキー、豚ジャーキー、いや待てよ鮭の潮風干しジャーキーかもしれません、
いずれにせよ、おお、理想のあなたがたよ。

「違法行為の内容は?」
「別世界の技術と機械の、無断使用です。
この世界でまだ確立していない技術を使って、この世界の現地人と違法行為者の故郷の住民の、魂を交換するつもりだったようです」

「『だった』?」
「通報されたと分かっている状態で、通報内容の技術を披露するバカは居ないでしょう?」

さぁ、着きましたよ。
コンコン子狐を乗せた車が到着したのは、都内のレンタルイベント会場。

「ここのイベントに出店しているそうです」
ツバメが言いました。
「インディーとアマチュア限定の、投資を目的としたVRゲーム発表会だそうですよ」

ゲーム発表会で、どうやって別世界技術を違法使用するつもりだったんでしょうね。
ツバメはそう言って、大きなため息を吐きました。
「さぁ、子狐。行きましょう。
この世界の住人とは違う『匂い』のする人を、その鼻でもって、探し出してください」

管理局スタッフのポンチョと一緒に、子狐のためのセーフティーハーネスも付けてもらって、
さっそく子狐、お仕事開始です。
群衆の中から特定の誰かを見つけるお手伝いは、
子狐、ちょうど先々週、だいたい5月9日頃に、
すでに経験済みなのです。

ケンサごきょーりょく!ケンサごきょーりょく!
はい、こんにちは、ケンサごきょーりょくよこせ!
コンコン子狐は尻尾をご機嫌に上げて、こっちのブースにそっちのブース、あっちのブースと出店者の、魂スメルをぐんぐん調査してゆきます。

ケンサごきょーりょく!ケンサごきょーりょく!
子狐はすっかり、偉くなったような心地です。
立派な御狐様として仕事をして、立派に自分の縄張りを守って、ご機嫌なのです。
しかも、このお手伝いが終わったら、美味しい美味しいジャーキーが待っています。
おお、ジャーキー、理想のあなたがたよ。

むっ!
やがて子狐は会場の奥に、日本人でも外国人でも、地球の生命体でもない、
すなわち、「この」世界の住民ではない誰かのスメルを察知しました。
見つけた!見つけた!ジャーキー!

「あっ、こぎつね!勝手に行ってはいけません!」
ばびゅん!
瞬発的に、全速力で、子狐が跳び出してゆきます。
別世界人を発見すればジャーキーが手に入ります。
その理想のジャーキーが、すぐそこにあるのです!
リードをカラカラ引きずって、トップスピードでもってターゲットの方向へ突撃していった子狐は、
ものの数秒で、イベント会場の人混みに、すっかり消えてしまいました。

果たしてコンコン子狐、理想のジャーキーをゲットできたのでしょうか……?

5/21/2026, 3:00:07 AM