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『私の名前』

私は私の名前が嫌いだ。それ以外にも嫌いなものは沢山あるけれど。私の存在が明確に定義されてるみたいで。
私を誰も知らない場所に行きたい。
そしたら、私は自由になれる気がする。非現実的なことを考えている自分が嫌になったので、私は今日も大学の旧図書室に向かった。本を読むのでは無い。誰もいないこの場所で私は歌うのだ。まるで自分がスターになったみたいに。

歌い終わった時、物音がした。
「誰?」
[あっ、すいません。]
見ると、1人の男の子がこちらを覗いていた。
「うるさかった…かな?」
[いや、そういう訳じゃなくて。とても上手で。なんて曲歌ってたんですか?]
「うーん。頭に浮かぶまんま歌ってたから題名なんてないよ。」
[そうなんだ…あの、お名前は…]
そう聞かれた私は、偽物の名前を口にすることにした。
自分の名前が嫌いだから。ただそれだけの理由だ。

「遥。大学2年。あなたは?」
[真。君と同い年。]
「いいね〜。かっこいい。」
[また来て、歌聞いてもいいかな。]
「是非。多分、ずっとここにいるからさ、」

遥。我ながらいい名前をつけたと思った。今日来てくれたあの子がすごく綺麗だったことは秘密にしておこうと思う。また会えたらいいな。今日は、なんだか空が綺麗に見えた。

7/22/2024, 1:26:31 PM