シュグウツキミツ

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寂しくて

「……どうしてこんなことしたの?」
「だって私……寂しくて」
「いや、いくら寂しくなってこんなことしていいわけないよね?」
「……ごめんなさい」
「いや、謝らなくていいから、どうしてこんなことしたの、って」
「だって……あなた全然構ってくれないじゃない」
「しょうがないだろ、仕事忙しいって言ったよね?」
「言ってたけど……言ってたけど……」
「けど、なに?」
「……帰りは遅いし、やっと帰ってきたと思ったら、すぐ寝ちゃうし」
「しょうがないだろ、疲れてるんだよ」
「だから私……私……」
「だから、って……よりによってこんなことすることないじゃないか」
「私だって、よくないことだとわかってたよ、だけど、あなた全然気づいてくれないじゃない」
「え、気づいてくれない、って……今回が初めてじゃないの?」
「……そうよ。何度もやってるわよ」
「え、何度も、って……え、なに、いつから……」
「……3ヶ月前からなかな」
「3ヶ月……!僕のプロジェクトが始まってすぐじゃないか、そんな、寂しいって、だって」
「だって、その前からあなた、全然私のこと見てくれてないじゃない。このごろなんか、忙しいことを言い訳にして全然見向きもしなくなって」
「そりゃあ……いや、その前は……」
「その前は、なに?今ほど忙しくなかったときも、あなた飲み歩いて全然帰って来なかったじゃない。最後に私と話したの、いつよ」
「え……いや、だってさ、あるだろ、つきあいとか」
「ええ、ええ、わかるわ、つきあいは大事だよね。私にとっても大事だわ」
「いやでも、だからといってこれは」
「これは、なによ」
「ここまで……しなくても」
「ここまで、って、なによ。今まで私のことなんて気にもしなかったくせに」
「でも、これは……」
「いいこと、これからはあなたは帰ってきてもこなくても構わないから。私と話もする気がないなら、無理に話さなくてもいいよ。私はもう大丈夫だから」
「え……そんな、僕はそれじゃあどうするば……」
「好きにしたらいいわ、好きなだけ仕事をして、飲み歩いて。つきあいは大事なんでしょ」
「いや……謝るから、どうかそれは……」

「住宅街に突如現れた巨大な城!なんて立派な、美しい建物でしょうか。この建物を造られた、主婦の赤井美代子さんにお越しいただきました。すごいですねえ、どのくらいかけられて造ったのですか?」
「ええと……3ヶ月くらい?」

11/10/2025, 10:27:08 AM