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Theme:ありがとう、ごめんね

「ありがとう、ごめんね」
「『ごめんね』は余計!こういうときは『ありがとう』だけでいいの!」
「うん。ありがとう」
これが佑衣と私のお決まりのやり取りだ。

佑衣との出会いは小学生のときだった。
男の子たちにからかわれていた佑衣を私が庇ったのが切っ掛け。
思えば、そのときも佑衣は「ありがとう、ごめんね」って言ってたっけ。
その出会いからもう15年以上の付き合いだ。

どちらかと言うと内向的で大人しい佑衣は、なかなか周囲に馴染めないことも多く、また、人と話すこともあまり得意ではない。
佑衣が困っていたらいつでも助けるのが私の役目。
「ありがとう、ごめんね」
その度に佑衣は言う。そのときの、はにかむような彼女の笑顔が、私は好きだ。

そんなある日、佑衣から「婚約者ができた」と告げられた。
恥ずかしそうにスマホの写真を見せてくれる。とても誠実そうな印象を受ける青年だった。
「おめでとう!式の日取りが決まったら教えてね」
私がそういうと、佑衣は嬉しそうに頷いた。

結婚式を1週間後に控えた日、佑衣が泣きながら「彼が亡くなった」と電話をしてきた。
私は職場を早退し、佑衣の元へと向かった。
泣きじゃくる佑衣の側に、私はずっと寄り添っていた。
婚約者の葬儀が終わった後、佑衣はいつものように言う。
「ありがとう、ごめんね」と。
私は小さく首を振って、佑衣をそっと抱き締めた。

佑衣、『ごめんね』はいらないよ。
あなたが私を頼ってくれる、それだけで私は幸せなんだから。
佑衣を守るのは私の役目だよ。他の人になんてやらせない。
ずっとずっと一緒だよ、佑衣。

12/9/2023, 9:14:31 AM