透明な水
ぽたりぽたりと滴り落ちたのは赤い色をした血だった。
頭を鉄パイプで殴られたのが原因らしい。
「いってぇな……」
鉄パイプで殴りかかってきた相手を睨めつければ、何故か、件の人物は涙を流していた。
「お、俺、そんなつもりじゃ、なくて」
じゃあどういうつもりなんだと思わないわけがない。
「ご、ごめんなさい」
痛むよね、どうしようと泣きながら呟き続ける。
「こんなのすぐ止まる」
「そ、そうなの?」
「それより俺はあんたに殴られるようなことした覚えはないんだが?」
「それは、その……」
「誰かに言われたんだろ?」
「どうして」
わかるの、と言いながら流しっぱなしだった涙を手で拭う、
どうしてもこうしても最近こういった気弱そうな輩が襲いかかってくるのが多いのだ。締め上げて理由を聞けば命令されてやっていると。いい加減鬱陶しいのでそそろ犯人を見つけ出したいと思っていたのだ。
「誰に言われてやったんだ?」
「それは……」
「俺が守ってやるよだから教えろ」
そう言えば暫く唇をもごつかせた後、主犯の名前を言った。
主犯は隣の高校を牛耳っている男でなぜか俺のことを目の敵にしている奴だった。
「じゃあ、乗り込むか」
がしりと涙が止まった男の肩を掴みそう言うと怯えた表情で「え」と言う。
「俺相手に鉄パイプで殴りかかれるんだったら十分戦力になる」
「ええ」
「それにお前に殴られた借りを返してもらってないからな」
「うっ」
そうして二人でたまり場に乗り込むのだった。
5/21/2023, 11:22:55 PM