むらたま

Open App

友達を作るのが下手だった。
本を読むのは好きだったけれど、物語に出てくるような事件は日常にはなくて自分は友達を作ることができないのだと思っていた。
毎朝近所の子と一緒に学校に行っていたけれど、話すのはいつも彼女のお出かけやお買い物の話、うちでは見せてもらえないテレビの話で、楽しいなんて思えなかった。

高校に入って似たような仲間ができた。
ちょっと暗いけれど個性的で、将来への不安もあって話は尽きることがなかった。
ニュース、文学、先生の癖、教科書にはない科学史や歴史の裏話。

そんな中の一人と卒業してからサイゼリアで会った。
私は浪人生で彼女は女子大生。
感極まってふたりは店内で人目も憚らず号泣してしまった。
友情ってこの世界にあるんだ。
あのサイゼリアはなくなってしまったけれど、私は今日も彼女のSNSを見て色んな事を考えている。

7/24/2024, 10:12:50 AM