「そういえば『お金より大事なもの』と、『大切なもの』ってお題が、3月4月頃あったわ」
「お金」は、「お金をいくら積んでも現代の技術では完全修復が不可能な物」みたいなことを、
「大切なもの」の方は「職場の掃除や整理の大切さ」を書いた気がする。
某所在住物書きは、さかのぼるのも億劫な過去記事を気合でスワイプしながら、なんとか探し当てた。
「ぶっちゃけ、地の文の言い回しとか言葉の選び方とか、そっちは大事にしたいわな」
やべ。ホントにそろそろネタのストックがキツい。
物書きは物語を組んで消して組み直し、結局消す。
お題は漢字変換で「大事にした胃」とも「大事にし鯛」とも、あるいは「死体」ともできるが、
胃を大事にするとは。大事な鯛とは?
「……ひとまず一回投稿して、後でまともなハナシを書き直せたら差し替えるか」
何度も何度も、数時間途中まで書いて白紙に戻し続けた投稿分の物語は遅々として進まない。
妥協も大事にしたい。物書きは挫折した。
まず、なにか、ひとつ投稿するしかない。さもなければ確実に夜まで執筆続行コースである。
――――――
大事にしたい、二度寝の時間、
大事にした、い草のたたみを張り替える、
大事に、したいり、下煎りしたコーヒー豆。
ただのケンカを大事、おおごとにしたい迷惑客。
色々考えられそうですが、今回物書きがご用意したのは「大事にしたい思い出」のおはなし。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内、メインの参道から外れた場所に、小さな石碑を伴った小さな祠がありまして、
それは名前を「たたり白百合の碑」、あるいは「附子の祠」といいました。
昔々そこに鎮まっていた花の亡霊が、人間に自分の花畑を散らされ壊され、街にされて、怒りと悲しみに狂って花の怨霊になってしまったのを、
3本尻尾の金雄狐と2本尻尾の銀雌狐が懲らしめて、トリカブトに変えて鎮め直したのが由緒。
だから附子なのです。だから祟り白百合なのです。
稲荷神社には花の怨霊を懲らしめるおはなしが絵本として残っており、
稲荷神社に住まう子狐は、皆、みんな、「自分のお家がどうしてそこに建っていて、自分のお家になんで知らない花の幽霊が同居しているか」を、
誇張表現ちょい増しで、覚えるのでした。
なんで「誇張表現ちょい増し」かって?
そりゃこの神社在住のおじいちゃん狐とおばあちゃん狐の武勇伝であり、初の共同作業だからです。
詳細は過去作、6月16日投稿分参照なのですが、
ぶっちゃけ、そんな昔々の投稿作、スワイプが面倒なのです。気にしてはなりません。
さて。
「私にとっては、大事にしたい花畑だったのさ」
やっつけられ、懲らしめられて、すっかり怨霊の毒気が抜けてしまった花の亡霊です。
稲荷の御狐にやっつけられ、三食昼寝とおやつ付きでタダ働きさせられてる亡霊です。
「何故大事にしたかったのかは、遠い昔にすっかり忘れてしまった。でも、守りたい花畑だったんだ」
覚えておきたかったのに、「狐のイタズラ」で大事な記憶を何個か盗られて隠されてしまって。
酷いハナシだろ。花の亡霊はポツリ呟いて、
さっさか、サッサカ。
参道に散らばるゴミなり枯れ葉なりを、
ボッチもとい頭の上に稲荷の子狐を乗せられ、髪などカジカジされつつ、掃除させられておりました。
花の亡霊は「人間」ではなく、「亡霊」なので、労働基準法を守る必要がありません。
花の亡霊は「人間」ではなく、「亡霊」なので、給料を現金支給する必要もありません。
福利厚生?税金控除?ナンダソレハ。
引く金取る税ありません。手取りが支給額です。
『大事にしたい労働力ですね』とは、神社の近所で茶っ葉屋さんをしているお母さん狐の言です。
「まぁ、そのわりに休みは貰えるし、ヒト並みの扱いはしてもらえるから。構わないけれど」
構わないけれど、別に、構わないけれどね。
稲荷神社に鎮められた花の亡霊は、稲荷の狐に頭が上がらないので、真面目に黙々参道のお掃除。
「……いてっ。………あだだだだ」
頭に乗っかる子狐にガジガジ髪を引っ張られつつ、
さっさか、サッサカ。花の亡霊は竹箒を1時間ほど、振り続けましたとさ。
9/21/2024, 5:16:06 AM