一週間ほど前、僕は友達と桜を見に来た。
友達と言っても半ば腐れ縁のような奴で、なんだかんだ言いつつ一緒に馬鹿をしたり、大騒ぎできる貴重な奴。
お互いに言いはしなかったが、きっと、お互い特別だった。
僕は基本的に社会の規則から外れたダメ人間で、適当な女の子を誑かしてはその子のお金で生活するような人間の塵を自認している。
夜の街を生きる僕は、彼がいなきゃ昼間から外を歩くのなんて、きっと滅多にしないだろう。
馬鹿で、口うるさくて、何かと小言を言ってくる喧しい奴。
だけど、やっぱり大切にしていた。
それなのに。
彼は3日と少し前、僕の所に全く足を運ばなくなった。
突然音沙汰が無くなるのは初めてじゃなかったから、僕もそこまで気にはしなかった。
でも、3日も間が空くのは初めてで、連絡の一つもないのはさすがにこれまでに無かったことだ。
人でなしの僕にだって、心配なんて感情はある。
珍しく彼とのトークルームに自分からメッセージを送ってみたり、普段は嫌いな電話だってかけてみた。
けれど、既読は付かないし、電話先から聞こえるのは無機質なアナウンスのお姉さんの声だけだ。
何か、ざわざわとした不穏なものが脳裏をよぎった気がしたけど、学校の勉強をろくにしてこなかった馬鹿な僕の頭じゃそれを言語化して誰かに伝えるような真似はできなかった。
彼は僕とは違う。
暖かな日だまりの下に生きていて、自分の身体を日銭のために切り売りすることもない。
僕なんかより、ずっとずっと世界に大切にされるべき存在。
今日、彼が見つかった。
あの日見た桜の木の下で、原型も分からないくらいの肉の塊になって。
全部、僕のせいだった。
僕は夜の街でさえ、随分な嫌われ者だったみたいだ。
奴らは僕と同じで臆病だから、僕に直接の手出しはしてこなかった。
もっと無害そうで、人を傷付け慣れていない彼を狙った。
得体の知れない激情が胃の奥からこみ上げて、それで奴らを見つけて、殴って、壊した。そんなことをしたって、彼はもう帰ってこない。
雨の降りしきる中散った血飛沫は、薄まって桜の色によく似ていた。
頬を伝う温かい雨の雫が、彼と一緒に桜の花まで、散らしてしまっていた。
来年の桜を僕が目にすることは、きっともう無い。
再来年も、その次も、ずっと。
テーマ:桜散る
4/18/2026, 8:43:26 AM