仕事終わりのある夜、私はとても落ち込んでいた。
気分転換に美味しい食事を、と思い探していたら不思議な雰囲気のレストランを見つけた。
名前はレストラン−輝星ー
気になって扉を開けたら、そこは壁一面に星が輝く美しいお店だった。
『いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ』
案内されたのは2人席のテーブルだった。
店内は4人席のテーブル4つ、2人席のテーブルが4つ。
ほかのお客さんも何人か居た。
『失礼致します、当店へお越しいただきありがとうございます。それでは店内の食事と出会いをご堪能ください。』
店員はそう言ってメニューを置いていくことなく立ち去った。
どうしたらいいのか分からず困惑している私のの元へ1人の男性客が近づいてきた。
『こんばんは、向かいの席に座っていいですか?』
疑心暗鬼の目を向けつつ私は頷くと、彼は私の向かいの席に座った。
男性はスーツ姿で、鼻が高く、顔立ちも綺麗だった。
私はこの人とどこかで会ったことがある気がする…そんな懐かしさを感じていた。
『ここ、不思議なレストランなんだよ。1人客はペアが見つかると食事が出てくる。食べ終わったら店を出ないといけないんだよ。』
とても楽しそうに話していた彼の姿が可愛くてクスッと笑ってしまった。
『良かった、笑ってくれた。ねぇ、君は星は好きかい?僕はすごく好きなんだ。星のかけら一つ一つが美しくて、懐かしいと思えるんだ。君はどう?』
彼と色々話していることがあまりにも楽しくて、食事が出るまでの時間があっという間だった。
『食事はね、なるべく静かに食べるのがここのルールなんだ。食事と星両方をお腹と心いっぱい堪能できるようにってことらしい。いただきます。』
食事はこれまで食べたことのないとても美味しいものだった。星を見ながら美味しい食事、心も体も満たされる感覚があった。
そして目の前に彼がいることにも、満たされている感覚があってとても不思議だった。
『美味しかったね。さて、お店を出よう。お店から出た後もまたこうして君と会えたらいいな。』
嫌、まだ離れたくない。
どうして、貴方といるとこんなに心が温かく懐かしい気持ちになるんだろう。どうして、こんなに満たされてるの?知りたいの。
私は彼に手を伸ばしたところで、目が覚めた。
『逢いに来てくれてありがとう、輝星。うぅっ…』
貴方から1番最後に呼ばれた私の名前で全てが繋がった。
『ありがとう、薙』
八神 輝星、私の好きな人。
もう一生、彼に会うことも気持ちを伝えることも触れることすらできない。
彼はもう、この世にいないのだから。
6/3/2022, 2:19:28 PM