「おつかれさま」
机の上に広げた書類から目を離して見上げるとお風呂上がりでまだ髪の濡れている彼女がいた。
「うん、お風呂さっぱりした?」
「したよ~。きりのいいところで君もお風呂にしなよ、ほかほかだよ」
「そうしようかな。」
散らばった書類を順番に重ね、開いたページには付箋を張りテーブルの隅へとひとかたまりにする。
少しかすむ目を何度かぎゅっと閉じていると、口に冷たくて固いものが唇に触れた
「梨だよ~、甘くて美味しいから食べて」
シャリ、と噛むとじゅわっと甘くて瑞々しさが口の中に広がった。
カラカラだった喉に染み渡るように。
「おいし…え、これお風呂上がっても残ってるよね??」
「残しておいて欲しい?」
「うん」
「じゃあ早く入っといで~、なくなる前にね」
「あ、そういうかんじ?急ぐ!」
ニコニコとすでに何口目かの梨を頬張る彼女にせめて一口は残しといて、と声をかけておく。
でも多分、彼女は満足するまで食べて皿を空にするんだろうな。あのニヤニヤは絶対にそう。
そしてヤバイ!と思って2個目の梨を切らずに丸ごと出して「残しといたよ!」と自信満々に言うのだ。
悪知恵ばかりなんだけど
そんなところが可愛いんだよね。
「梨」 和やかな愛情
10/14/2025, 10:26:49 AM