「こっちに恋」
看板にそんなことが書いてある
散々さまよってきたけれど、これは僕の求めていたものなんじゃないか?
孤独感を拭い去るには、いい人を見つけ、恋でもするのがいいのかもしれない
恋があるのなら、向こうへ行ってみようか
恋なんて、あまりしたことはないけど
向こうへ行けば、この状況を打破できる
そんな気がする
僕は一歩一歩、看板の示す方向へ進んでいく
そうして進むなか、どこからか声が聞こえた
「あいにきて」
会いにきて?
誰が呼んでいるのだろう
会わなければいけない人がいただろうか?
いや、違う
会わなければならないのは、その通りだけど、そういう問題じゃない
ただ会うだけじゃダメだ
この声は、会いにきてと言ってるんじゃない
会いではなく愛だ
「愛にきて」
もう一度声が聞こえた
そうだ
恋なんてしている場合じゃなかった
恋はまた、するべき時が来たらすればいい
恋で孤独を紛らわせてる場合じゃないんだ
いや、僕は孤独だったんじゃない
向き合わず、遠ざけていただけだ
恋に逃げるわけにはいかない
真正面から話さないといけない相手がいた
その相手の愛へ向かって行かないといけない
そして、僕の失っていた愛を取り戻して、その愛を伝えないと
そこで目が覚めた
どうやら夢を見ていたようだ
目の前には、姉と弟、妹がいた
僕は姉と大喧嘩して、絶縁するつもりで家を出て、勝手に孤独感に苛まれていた
三人とも心配そうに僕を見ている
いつの間にか、今住んでるところの目の前にある公園で眠ってしまったらしい
きっと、僕の居場所を知って会いに来て、公園で眠る僕を見つけたのだろう
とにかく、謝らないと
そう思って口を開こうとすると、姉が僕を抱きしめた
すごく、温かい
ごめん
もう、こんな馬鹿なことはしないよ
三人の愛が痛いほどわかったから
僕も、たくさんの愛を持って、家に帰ろう
大事な家族を、今度こそ大切にしよう
4/25/2025, 10:46:31 AM