ハクメイ

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そこは、薄明色に染まっていた。
道も、家も、木もない。
ただ薄明色へと、空間が変化し続けている。
縦も横も、奥も手前も、何もかもわからない空間を、一人の少女が、てくてくと歩いている。
ガラスの様に透明な髪が、肩下まで伸びて外側にハネ、顔にはガスマスクをはめている。

「次は1940…え!戦時中じゃないですか〜今日はハズレだな…スニーキングが大変なんだよ〜」
マスクでこもった声を上げ、少女は歩き続ける。
「タイムトラベルも、肉体労働ですね。
たった一つの手紙を届けるのに、手間がかかりすぎですよ。やっぱり辞めようかな…でもあの人怖いんだよな〜ビジュが」

時間移動の郵便屋は、誰に訊かせる気もない愚痴を、歩くための燃料とし続けた。

お題『あなたに届けたい』×『タイムトラベル』

1/30/2026, 12:38:51 PM