いしか

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通り雨が降ってきた。
濡れないように近くのバーに入る。
入りづらいやすいより、濡れないほうが最優先だった。

カランカランッ

「いらっしゃいませ」
「すみません。雨宿りさせて頂いても良いですか?あっ!もちろんちゃんとお酒は頂きます!」
「あはは、良いですよ。気にしなくて。今は他にお客様いらっしゃいませんし、
どうぞ、雨宿りしていって下さい」
「ありがとうございます」

マスターさんは、私と殆ど年が変わらなそうに見える。
でも、見た目が若い方なだけかもしれない。

「こちら、どうぞ。ウェルカムドリンクです」
「わー、素敵な色のカクテルですね。
ありがとうございます。」
「それ、アルコールは入って無いんですよ」
「えっ!?そうなんですか?」

ウェルカムドリンクとして提供されたカクテルは、綺麗な青色をしている。
とってもきれいで、透き通って見える。

「お酒が苦手な方にも、雰囲気や味を楽しんで頂きたくて。こちらを提供するようになりました」

「素敵ですね。いただきます」

フルーティーで爽やかな味が口の中に広がる。これは美味しい。

「………とっても美味しいです」
「…ありがとうございます。」

母から聞かされた、昔の古い言葉。3B
美容師。バンドマン。バーテンダー。
女性が、付き合ってはいけない男性の職業。

今でこそ古いなーと思うけれど、けれど、このマスターの接客を見てれば思う。

これは、惚れてしまうと。

「あの、マスター。失礼がなければ、今、おいつく何ですか?」
「私ですか?私は、今年で32歳になります」

やっぱり若かった。
私よりは年上だけど、何処か若くて、でも、とても落ち着いてる人。

「マスターは、ご結婚されてるんですか?」
「いいえ。結婚どころか、お付き合いしてる方もいませんよ」

私は意外だった。
こんな素敵そうな人を世の女性がほっとくだなんて。

「マスター、モテそうなのに………」
「あははは、モテそうですか?私」
「はい。とっても」

そうですか。というマスターの顔は、何だがずっと笑っている。
私、可笑しいこと言ってる?

「マスター、どうして笑っているんです?
私、可笑しいこと言ってます?」
「いいえ。楽しい会話だなと、純粋に思っているだけですよ」

あってたったの数十分間。けれど私は、マスターの事でいっぱいになってしまそうだ。
私、初対面の人の事を気にしてる。

私がこれから先、このバーに通うことになるのは言わずもがなだが、この先どうなるかは、お楽しみということで。


9/27/2023, 11:12:00 AM