ミミッキュ

Open App

"勿忘草"

 新しいメモ帳を買いに、雑貨屋に来た。
「えーっと、いつも使ってるやつ……。あった」
 目当ての物を一つ手に取ってレジへ向かう。ふと、途中のアロマコーナーに足が止まった。
──そういや、香水がそろそろ切れそうだったな。
 去年の夏から時々付けていた向日葵の香水が、ようやく無くなりそうになっているのを思い出す。中身がまぁまぁ多くて使う頻度も量も少ないから、中々減らなくて、使い切るのに一年かかるんじゃないかと思っていた。
 そんな香水の中身がようやく四分の一になってきた。良い香りだからと思わず買ってしまった、向日葵の香水。『男が香水なんて』って思っていたから、無理に使う事が無くなってきて嬉しく思う。
 だが、香水の香りで一日の終わりを締めくくっていたのもあり、少し寂しく思っている自分がいる。ハナはあの香りが結構お気に入りで、香水を付ければ嗅ぎに手首に擦り寄ってきて、太腿を前足で捏ねてきた。
──向日葵じゃなくても、向日葵のような香りのアロマを買っていくか。アロマなら香水より面倒な事にならなそうだし。
 色々な香りのアロマが置かれた棚の前に行き、何があるのか見ていく。
──へぇ……。これ、アロマディフューザーっていうタイプなのか。これの方が場所取らなそうだし、使いたくない時は枝を抜けばいいし、簡単でいいな。
 タイプを選ぶと、次にどの香りが良いか、テスターの香りを嗅ぎながら探していく。
──これはちょっとな……。次は……へぇ、【勿忘草】のアロマなんてあんのか。
 テスターを手に取り、勿忘草の香りを試す。
「……。お」
──この香り、好きかも。
 ほんのりと甘く、儚げな香り。この香りなら男でも使いやすい。それに、この香りならハナも喜びそうだ。
 勿忘草のアロマディフューザーを手に取り、メモ帳と共にレジへと持っていき、精算を済ませる。
──早く帰って試そう。
 メモ帳とアロマディフューザーを入れた袋を片手に、早足で医院への帰路に着いた。

2/2/2024, 12:06:20 PM