未知亜

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ㅤ最高気温が昨日より11度下がった。涼しいというより寒いくらいだ。長い長い、永遠とも思える夏が過ぎると、秋をすっ飛ばして冬が来るらしい。 四季は一体どこへ行こうとしているのやら。

「秋ってさ、2週間しかないよね」
 電車のドアにもたれ、君は空を覗き込むように窓の外を見上げた。
「何情報よ、それ」
「え? 私調べかな」
 目線を外に向けたまま、君が呟く。なるほど、一理あるなと思う。
 以前は季節の移ろいをじっくりかみ締めていられた気がする。少なくとも、夏はこんなに過酷じゃ無かったし。けれどここ数年は、ある日ストンと気温が下がり、一気に冬になっていく。それこそ2週間くらい経ってから、あれって秋だったんだと分かる感じ。

 ホームに降りた君は人波をよけて立ち止まり、すっと足を開いた。腰を落として手を広げ、すうぅと深呼吸する。
「なんかさ、ちゃんと受け止めたくなったよね、秋ってやつを」
 なんたって2週間だけの季節だから。
 いつものおかしな理屈に笑いながらも、君の隣で真似して腰を落とした。


『秋の訪れ』

10/1/2025, 5:15:52 PM