宛先もなく旅に出て、当然のように資金が尽きた。家の倉庫にあった中で、唯一金に替えられそうだった時計を持ってきたけれど、見るからに安そうだ。振るとカラカラと音が鳴るし、二束三文のガラクタであることは疑いようがない。「ここまでかなあ」福岡からウネウネと北上して、今は東京だった。旅立つ前に家も解約したから、戻る場所すらない。時計を握って、公園に項垂れたまま、時間だけ流れた。
6/28/2023, 9:21:09 AM