「で、誰のことが好きなの」って、それ、そんな鋭い眼差しで言う言葉じゃないと思う。2月にチョコを持って彷徨いてた私が悪いかもしれないけど、これ自分用なんです。いや信じて。どんどん鋭く機嫌悪くなる目つき。違うんです、席替えしたばっかりだから前の自分の席に行っちゃっただけで、それで慌てて戻ろうとしたから挙動不審になっただけで。このチョコは誰のものでもない自由のチョコなんです。そもそも、市販の安物のチョコそのままだし。流石の私でも、人にあげるってなったらもうちょっとちゃんとしたの渡すと思う。意中の相手なら、尚更。
というか今日13日じゃん。冬とはいえ、チョコを一日前から机にスタンバイさせるのは良くないんじゃない?…と、ここまで言って、やっと彼の説得に成功した。もはやドラマの尋問する警官みたいな顔してたよマジで。もうちょっとでカツ丼たべれるかと思った。
「…じゃあさ」
若干反省というか、寂しそうな顔をしている
彼が口を開いた。
「そのチョコ、明日俺に渡して」
え、と声が先に出た。食べるなよ、とだけ言ってそそくさと出て行った後のドアをポカンと見つめる。手のひらに残るのはもう食べれなくなったチョコレート。陳腐ななぞなぞの答えのようだ。…とにかく、この安物チョコレートをなんとか包装できる代物を、今日中に用意しなければならない。人にあげるとなると、ちゃんとした物に仕上げるべきだ。
そう、意中の相手なら、尚更。
お題「鋭い眼差し」 白米おこめ
10/15/2024, 12:40:22 PM