300字小説
花の礼
夕刻、息子との帰り道。息子が公園の花壇を指さす。
「お母さん、僕の植えたお花が咲いてる」
親子で参加した街の美化ボランティアで植えたユリの花が綺麗に咲いている。
「本当ね」
気配を感じ、私は背後を振り返った。中年の男がこちらに向かってくる。最近、街を歩く親子連れをターゲットにしているという『ぶつかり男』だろうか。男はニヤリと笑い、歩くスピードを上げた。
私が咄嗟に息子を抱えたとき
「危ないのう」
突然、男の後ろにおじさんが現れ、肩を叩く。男の姿がぺかりと消えた。
「しばらく、儂の中をさ迷っているといい」
おじさんが息子に笑いかける。
「坊主、花をありがとな」
ひらりと手を振り、おじさんは地面に溶け込むように消えた。
お題「街」
6/11/2024, 12:09:04 PM