この世の中は「世界でひとつだけ」で満たされている。
少なくともA子の生きている世ではそうなのだ。
一つとして同じ物が無いと常々思う。
いくら量産されたスーツを身に付け、他の人とほぼほぼ変わらぬ化粧をして面接に臨み、他人と同じような志望動機を説明したとしても、である。
「まーたお祈りメールだよ」
もう何度落とされたか分からない不採用通知を削除して独りごちるA子。
この広い広い世の中には「世界でひとつだけ」の私をきっと必要としてくれている場所がある。
頬をパンパンと叩き、再度気合いを入れ直す。
――よし、やるぞ。
彼女はまだ見ぬ世界を拡げるべく、その扉を慎重にノックした。
9/9/2024, 10:46:14 PM