謎い物語の語り手

Open App

紅茶の香り


雨が止んだ。いつもの喫茶店に行こう。

そうして決まった席に座る。

好きな紅茶とクッキーを注文してから店内を見る。

視界の真ん中には密かに想いを寄せる男性が映る。

話し掛けてみたいのに、私なんかが、と思ってしまう。

だってあの人は有名な騎士の学校の優等生なんだから。

こうして遠くから見るので精一杯。

いつもこうして、紅茶の香りとクッキーを楽しんで。

そろそろ帰らなきゃ。と、お金を払って店を出た。

「…大変だわ」

また雨が降りだしてきていた。傘を忘れてたわ。

「お嬢さん、私の傘に入っていきませんか。」

「まぁ、ありがとう……あら、」

隣にいたのは憧れの人。

「あの紅茶の香り。私も好きなんだ。」

彼が優しい声で言い、私に微笑み掛ける。

あぁ、神様。私はどうしたらいいの?

10/27/2024, 6:17:45 PM