Frieden

Open App

「春爛漫」

今日はいい天気だ。暖かくなってきたから寝覚めも悪くないし、少しだけ早く起きられた。

「あ、おはよう!!!珍しいね〜!!!キミが早起きなんて!!!」

自称マッドサイエンティストは楽しそうに朝ごはんを作っている。何かいいことでもあったのか?

「今日隣町で桜祭りが開催されると聞いたよ!!!行こう!!!」
人が多いところはあまり好きじゃないから一人で行ってこいよ。

「え〜〜!!!ヤダヤダ!!!キミも一緒に行こうよ〜!!!ボクは桜餅と三色団子をたらふく食べたいんだ!!!おすすめを教えてくれたまえよ!!!ボクは花を食べるという発想そのものに興味を抱いているのさ!!!」

花より団子とはこのことか……。桜を見にいくんじゃなかったのか?

「桜を目で楽しみつつ、味も楽しむんだよ!!!五感を全力で使ってね!!!」

仕方ない。行くか。
「やったー!!!」

麗らかな春の日の下で、自分たちは花見をしに桜並木まで向かった。

「うおー!!!桜ってこんなに綺麗なんだね!!!」
「花筏ってこういうやつを言うのかい?!!」
「あ!!!屋台があるよ!!!桜餅が売られているじゃないか!!!団子もあるぞ!!!」

相変わらずやかましい。ちょっとは落ち着け。
「……にしても、人が多いね〜!!!まあこんなに綺麗な景色が、春にしか見られないっていうのもあるから妥当ではあるか!!!」
「……ぼっちはキミだけだね」
なにか言ったか?

「いや〜???ま、とにかく桜餅と三色団子の食べ比べをしたいから全種類買ってきてくれたまえ!!!ボクはここでキミの分まで桜を楽しんでおくからね!!!」

……はぁ。まあせっかく来たんだ。とりあえず餅と団子を買おうか。意外と並ぶんだな。

行列の中で、自分もゆっくり桜の木を見上げた。
満開の桜から漏れる日の光が柔らかい。
風に身を任せてひらひらと舞う花びらを目で追う。地面に落ちる。そこは花びらと小さな花で溢れていた。

これが「春爛漫」か、そう思っているうちに自分の番が来ていた。とりあえず頼まれていたものを買う。……意外といい値段だな……。

値段に驚きつつ、あいつの待つ場所へと向かった。
「おかえり〜!!!遅かったね!!!随分と並んでたのかい?!!とにかく、『例のブツ』は買えたんだろうね……?」

そんな言い回しをするなよ。……はい、これが『例のブツ』だ。

「うひょ〜!!!桜餅って本当に桜色なんだね!!!いっただっきまーす!!!おいしい!!!」
餅なんだから気をつけて食えよ。

なんて思っているうちに全部食べてしまった。おい、自分の分は……??
「あ……ごめん……せっかく並んでもらったのにね……。キミの分まで食べちゃった。にしても桜って美味しいね!!!」

満足するまで桜を見たあと、帰路についた。
途中で買いたいものがあったことを思い出したのでスーパーに寄る。

値引きされた弁当を選んでいるときにあいつが自分を呼んだ。

「おー!!!これ見て!!!『春爛まん』だって!!!中に桜餡が入っているそうだよ!!!これも買ってよ!!!」

よほど桜が気に入ったのか勝手に買い物カゴに「春爛まん」を入れる。全く……。

「今日はありがとう!!!あとでこれ、半分こしようか!!!」

半分こ、か。そんな言葉久しぶりに聞いたな。
少し懐かしい気持ちで、自分たちは家に帰った。

4/11/2024, 9:42:47 AM