薄灰色に濁った世界が、目を伏せても滑り込んでくる。痛いのか、それとも違うのか。手首の切り傷は鋭い。あんなに発明の得意だった手は、汚れてもないのに黒い。そんな気がする。もっとも、指まで隠れる錆た鉄の手錠さえ、なければ見えるのだが。
がっちり組んだ石レンガを重々しく踏みつけ、見上げた奥には何体もの兵が槍と盾とを持ち歩き、自分を恨めしげに見る。そうか、僕は罪人か。
…殺人の。
「罪状 イヴァライト・テルヌン!被告は親類を切り裂き、殺人した罪に追われる。よって、公開処刑とする。」
槍がクロスに立てられ、首の横にやってくる。
…次生まれてくるときは、こんな人間になりませんように
何も分からなくなるまで0.1秒の間、そんなことをおもった。
お題
刹那 より
4/28/2023, 1:10:52 PM