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ひやりと、頬の冷える帰路。
それは人知れず孤独感を誘い、若干だが心細さまでも思い起こす。
屋内から漏れる団欒の証が、その感覚を強くさせるのだ。

暖かな根城への恋しさを紛らわそうと、高々と頂点の位置を超え、そこから頭上や足元の道までも静かに照らしてくる相手へ目を向けた。

──“あれ”は、やや欠けているのか?
そんな疑問を持ちつつ、肺には冷たい空気を多く取り入れさせ、その中へ熱を含ませるよう「ハア」と殊更に強く吐き出してみた。

薄暗い空虚へ放った息が、白いモヤとなる。
それは遠く届かぬ先に浮かぶ、真ん丸そうな光源をほんの少しだけぼやけさせた。

【月夜】

3/7/2024, 12:53:43 PM