〜はなればなれ〜
「お姉ちゃぁぁぁぁ!!」
崩れる崖の上
泣きながら私の手を掴もうとする妹
手をめいいっぱい伸ばし必死になって私のことを掴もうとする
瓦礫と共に落ちていく私
人生短かったなと言わんばかりに自分の死を悟った
「掴んで!!いやぁぁ!!お姉ちゃ!!お姉ちゃぁぁぁぁん!!」
必死こいて手をばたばたと振る
もう届かない距離で手を伸ばすことも諦めた
元気で……ね…
こぼれ落ちる涙が落下する速度と合わず上へと昇っていく
擦りむけて血が滲んでいる手を最後に振る
ゴンッと言う音と共に私の意識は薄れていった
村の生贄
私たちはどちらかが長になりどちらかが生贄となる運命を持った双子だった
長は長生きをする女が担う役目
生贄は主には男が行っていた
でも、長となる器を産む物が不吉な双子を産んだ
その結果生き残った方が長となる、そういう法ができた
双子で戦わせようという案も出たが、血を分けた姉妹だから殺し合いなんてできるはずもないと却下
それならと狩りをさせることに決まった
狩りは魔術を使ったもので行われ静寂の森で行われた
だが、本質は狩りではなくどちらか多くの男を殺せるのかというような残虐なものだった
妹は顔を青ざめさせ私の手を強く握った
カタカタと震える足に合う速さで歩く
森をぬけたところ、現在の長が審判を下すのだ
こんな、…こんなことして、許されるんですか…!!
声を荒らげる私とそれを蔑むような目で見てくる長
ヒソヒソと何かを話し始め私と妹は引き離された
「お姉ちゃ!!」
崩れそうな崖の上に連れてこられた私は抵抗しようとしていたがそれも遅く崖が2人分の重さに耐えられず崩れ落ちていった
薄れる意識の中ボロボロと大粒の涙をこぼす妹が頭に浮かぶ
最後…くら…い笑っ…てよ…
暗く深い森のような場所に意識が投げ出される
私たちははなればなれになった
今の村はどうなっているのだろう
妹は元気してるのだろうか
古びた書庫のような場所で私はひとりほっと息を吐く
はなればなれ…に、なりたくなかっ…たな…
ぽつりと落ちた涙は緑を深く黒く染めていく
11/17/2022, 9:00:11 AM