きょうはあたしのたんじょうびです。しゅんくんがあさにうちにきておはなをもってきてくれました。あたしのすきなピンクいろしたおはなでした。しゅんくんにありがとうといったら、どおいたしましていわれました。おかえしにおとといママとやいたうずまきのクッキーがあまってたからあげたらおいしそうにたべてました。しゅんくんだいすき。おっきくなったらしゅんくんとけっこんしたい
「うわぁ……」
部屋を片付けていたら見つけた赤い手帳型の日記帳。クローゼットの奥のほうに落ちていた。当時、このお洒落なデザインのノートは父が東京に出張に行ったお土産に私に買ってきてくれたものだった。この時の私は5歳前後。何を書こうか考えて、日記帳にすることにした。けれどページ数がまあまああるのに最後まで書ききることはなかった。年齢も幼かったから途中で放棄してしまったのだ。だから書いてある日記の数は10日分ほどにしか満たない。何も書いてないページは、少々色褪せて真っ白ではなくなっていた。
「なつかしいなぁ」
と同時に物凄い恥ずかしさも感じた。記念すべき1ページめ。どうやら誕生日だったらしい。当時の私はこんなふうに思っていたのか。その時の記憶は正直言って思い出せないけど、きっと幸せな誕生日を送っていたに違いない。それは、20年経った今も変わることなく。
「何してんだよ」
いつの間に帰ってきたのか、ドア付近に彼がいた。もしこれを見せたらなんて言うだろうか。きっと驚き半分笑い半分ってところだろう。でも、これはこのまま大切にしまっておこうと思う。私の秘密の恋心は誰にも見せないんだ。たとえあなたでも、まだもう少し秘密にしておこうかな。そっと閉じて、日記帳は引き出しの中にしまった。
「おかえり駿くん。夕飯何食べたい?」
「任せる。それより、これ」
「うわあ」
彼が後ろ手に持っていたのはピンクの薔薇のミニブーケ。おめでとう、という言葉と共に私に差し出してくれた。
「ありがとう」
初恋の人は今、私の旦那さまになりました。そして今でも誕生日に花をくれます。20年前の私に何か伝えられるのだとしたら、無事に幸せになってるよ、って教えてあげたい。この幸せよ、どうかこの先も続きますように。
8/27/2023, 8:39:44 AM