22時17分

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「時を告げる行列」とやらに並んでみた。
ポストに入っていたチラシを見るに、場所は新宿駅の真下にあるという。駅ビルの地下街だろうか。
というより、時を告げるとは、何だろう。
私は疑問を解決しにいった。空席状況の目立つ電車に乗り、世界の迷宮たる新宿駅へ降りた。

フロアマップと家から持ってきたチラシ、双方を見比べながら、目的地の在処を比較検討する。
別に正確な位置を特定する必要はないのだ。
行列なのだから、どこかしらにぴょこっと最後尾が……あっ!

地下X階。だいぶ階段を降りたが、やっとそれらしきものが見えた。
ちゃんと「最後尾」と書かれたプラカードを持ったガールが立って、異様な長さの存在感を放っている。

私はその列の最後尾に並んだ。
それから、時間が経つごとに行列の順番待ちをする。
「時を告げる」とあるように、カフェの小さなチャイムが鳴るごとに一歩前に進む。
一人ずつ店内に入っているのだ。
これが「時を告げる」という意味なのか、と一人得心した。

ただ、何の店なのかはよく知らない。
初めはラーメン屋の人気店の名前だと思って来てみたが、ラーメンどころか美味しそうな匂いは漂っては来なかった。
飲食店ですらないのかもしれない。
例えば、有名な美容室だとか、ネイルサロンとか。地下街に惑わされてはならない。例えば温泉……とか?
想像が膨らみを持つ。
きっと到着すれば、何かしら知れると思った。

私の今の身分はニートという、世間でいうところの思想家に当たるので、時間があり余っている。
家でも、行列に並んで待つ間でも、思索をすることには変わらない。この行列の正体を知るまで、考え抜こうじゃないか。

……そういえば、お腹が空かないな。
「すみません、あとどれくらいですか」
最後尾を示すガールに聞いてみた。笑みを浮かべて答えてくれた。唇が妙に色っぽい。
「待ち人数はあなたでちょうど20人おりますので、うまく行けば20分で済むと思いますよ」
「なるほど、そうですか」
「ええ、寝ていればすぐです」
私は窓の方へふと向き、ひょっと、一瞬できた影を目撃した……ような気がした。
下から上へ、細く長く上がるもの。
普通に考えたらツバメか。

などと考えたが、地下街なのに外が見える窓があることに気づくべきだった。
そうすれば私も……うっ、なんだっ。
急に、眠く……。
そこにシャランとチャイムが鳴り、そこで意識は切れた。

「では、長い間おつかれさまでーす!」

20分後。気づいた。
ああ。なんで気づかなかったのだろう。
彼女の背中には、翼が。
そして、私は空に向かって落ちるように飛んだ。

9/7/2024, 9:18:48 AM