霜月 朔(創作)

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新しい地図



俺達は、何度も同じ道を歩いた。
朝焼けの川沿いで、
空に描いた夢を指さしながら、
くだらない話をして、笑い合った。

お前の笑い声が、好きだった。
まるで、遠くで小鳥が羽ばたくように、
俺の胸をそっと撫でて、
何も残さず消えていく。

何度も、言いかけては飲み込んだ。
この想いを言葉にすれば、
築いた二人の距離が、
崩れてしまいそうで、
その怖さに、いつも負けていた。

お前を誰よりも信じている。
だからこそ、
それ以上を望んでしまう俺が、
どうしようもなく、嫌になる。

俺の心の中には、
お前と歩きたくても、
歩けない道ばかりが、
いくつも積み重なっていく。
踏み出せば崩れそうな足元を、
今日もただ、見詰めている。

新しい地図を持っているのは、
きっとお前の方で、
俺はまだ、あの日のまま、
破れかけの古い地図を、
握り締めている。

それでも。
俺は新しい地図を描けないまま、
“また明日”と、手を振るお前を、
今日も、黙って見送るんだ。

4/6/2025, 4:00:47 PM