私の家の庭には桜の木が植えてありました
春になるとそれはもう綺麗に咲くのです
私は病弱でした
いつも同じような寝巻きを着ていました
窓から見える同じくらいの子達が
かわいらしい服を着ているのがとても羨ましかった
でも私には桜の木がありました
窓を開けていると風が吹くタイミングで
ふわっと桜の香りが降るのです
花びらも部屋の中に入ったりします
お母さんは片付けが面倒だからと
窓を閉めてしまいますが…
私は何よりもその時間が好きでした
人間よりも桜の花の方が
よっぽど弱くて儚い存在のはずなのに
私はどうして何もできることがないのかと
日々苛まれたりもしました
ある日の夜
目が覚めてしまったので鉛のような身体を動かして
窓をあけました
昼間とはまた違った風が吹きました
涼しくてとても気持ちの良い風でした
もっと夜風を浴びたくて
もっと桜に近づきたくて
もっと外を見てみたくて
私は窓に近づきすぎてしまいました
窓の外には小さな柵のようなものが付いていましたが
本当に小さいものなので
私の身体でも跨げてしまいました
身体が浮遊感で包まれた直後
ドサッと音がして私は地面に落ちました
身体をうってしまったのですぐには動けませんでした
しばらく経つと痛みが薄れてきました
でも私は動きたくありませんでした
こんな私が死ぬのはここでもいいかもしれない
桜と一緒に地面に散るのもいいかもしれない
そう思ったんです
家の外にほとんど出たことがないので
土に触れるのも初めてでした
風がどんどん私の身体を冷やしていったので
私は自分の最期が近いことを悟りました
目を閉じる時、私は土の匂いを知りました
5/9/2026, 10:58:43 AM